今まで食品衛生法で農薬の残留基準値が設定されているものは、約250農薬だけでした。
しかし、海外にはこの250農薬以外にも様々な種類の農薬があり、使用する可能性が十分にあります。そのような農薬に対しては、特に基準値などは設けられていないので、フリーの状態でした。
今回の「ポジティブリスト制」の導入により、基準値を250農薬から799農薬まで幅広く設定し、また基準値を設けていない農薬についても一律の残留基準値を設定しました。
これにより、今までのように基準値がないのでフリー状態となる事が一切なくなります。
■残留基準のなかった農薬の多くに、暫定基準を設定(250農薬→799農薬へ拡充)
■基準値を設定していない農薬について、一律基準(0.01ppm)が設定
日本の食品を輸入する会社は、農薬の規制範囲が広がったので農薬検査項目が増え、それにかかる検査費用も増えてくる可能性があります。
また、作物を栽培する時に近隣の畑で使用した基準値の設定されていない農薬が風などで飛んできて、輸入作物に残留してしまった場合、一律基準の0.01ppm以上の残留が検出されると販売できなくなります。ですから、近隣畑の管理も必要となります。
このように、日本へ輸入される食品は06年5月下旬よりまた一段と厳しく取り締まられ、安心安全なものへとなります。
65物質
健康を損なうおそれがない為対象外
2006年5月下旬より導入された「ポジティブリスト制」ですが、農薬に対しての取締はどのように変わるのでしょうか?
食品衛生法(厚生労働省による管轄) 残留農薬基準による取締
衛生の最低限を遵守し、食品の安全性を確保する法律で、その一貫として、食品中に残留しても害のない農薬の基準値を制定
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1947年(昭和22年)に飲食に起因する衛生上の危害発生を防止する為に制定
2003年(平成15年)に残留農薬と添加物の規制及び、監視、検査体制を強化
2006年(平成18年)に残留農薬基準にポジティブリスト制を導入(5月予定)
今までは基準値が定められていない農薬については、取り締まられることはありませんでした。しかし、中国産ほうれん草からの残留農薬問題を筆頭に、輸入食品から相次いで残留農薬の問題が出てきました。日本の基準値ではあくまでも、日本での栽培を基準にして考えています。同様に各国でもそれぞれ使用農薬や基準を定めています。
海外では様々な農薬が使用されており、食品輸入量も年々増加している実態を受けて、諸外国の基準値や使用状況などを考慮しながら、基準値の見直しと対象農薬の拡大を実施することとなり、「ポジティブリスト制」が導入することとなりました。
現在、中国産ほうれん草は中国政府と日本政府が安全を確認し、認証をした工場のものしか輸入されていません。現在、中国全土の中の45工場(06年2月現在)だけが日本への冷凍ほうれん草の輸出が認められています。
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農薬取締法(農林水産省の管轄)
農薬について登録制度を設けて、販売や使用などを規制する法律
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1948年(昭和23年)に農薬の販売と使用規制について制定
1971年(昭和46年)に農薬の残留や毒性が問題となり、販売禁止や制限を実施
2003年(平成15年)に無登録農薬の製造、輸入、使用を禁止 |
作物が生長する過程では、病気にかかったり、虫に食べられたり、雑草が生えてしまって日照が妨げられ、土壌中の養分をとられたりと、様々な事が発生します。そのような出来事を予防したり、撃退するのが「農薬」です。
農薬には、病気対策の「殺菌剤」・虫対策の「殺虫剤」・雑草対策の「除草剤」などの種類があります。そして、化学物質を原料とする「化学合成農薬」と天然系物質を原料とする「天然系農薬」があります。
【 農薬の歴史 】
日本では第二次世界大戦の前までは天然系農薬(銅、石灰硫黄、ニコチン、蚊取り線香と同じ成分の除虫菊など)や、自然界の連鎖を利用した天敵手法などが主でした。
戦後、科学技術の進歩により「化学合成農薬」が登場し、収穫量の増大や農作業の効率化(特に除草作業)に貢献しました。そしてどんどん化学合成農薬が広まっていきました。
化学合成農薬の登場により、手作業での労力は緩和され、虫食いや病気による斑点などが無い、見た目のきれいな野菜が出回るようになりました。また、同時に栽培技術も進歩し、一年中野菜が出回るようになりました。
しかし、化学合成農薬の中には土壌や作物に成分が残留しやすいものや、毒性の強いものもあります。化学合成農薬が広まっていくなか、環境や人への害が心配されるようになりました。
そして、作物の出来だけではなく、環境と人への安全性を確保する為に、農薬の使用方法や農薬を使用した食品についての法律が定められました。 |
知っておこう! / 聞いた事はあるけれど、どういうもの?
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